なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか
○タイトル なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか
Becoming a Deliberately Developmental Organization
○ジャンル 経営、組織論
○著者 ロバートキーガン他
○発刊 2017年8月9日
○総ページ数 397p
○出版社 英治出版
○Mipox対象者 管理職以上
○お薦め度 5( 1~5で5が最高格付)
○難易度 4(1~5で5が最高難易度)
○期待できる効果 最新の「組織および個人の成長についての組織論」についての考え方が学べ、それを実践することにより大きな成果が期待できそうです。
●一言コメント 米国での三社の取り組みをのぞき見しているかのようなリアル感も感じる刺激的な内容です。弱点を皆で公開して克服する。個人の成長=ビジネスの成長、個人の内面を職場に持ち込むなど、従来の組織ではなかったことを実践し成功している事例を紹介しています。 本手法をすすめていくにあたり、注意点としては、事前にできるだけそれぞれがこの新たな考え方を理解し、一方で 個人間、組織間で信頼関係を築いておくこと、お互いの良い点も認め合うことも重要だと認識すること、などあると思います。
●概要 ・本書で紹介する発達指向型組織は、「人材開発」のまったく新しいモデルがもつ可能性の大きさを実証している。本書は、組織と個人の両方の潜在能力を開花させる方法を示すことを目的にしている。両者が互いの成功を後押しする力を飛躍的に高めるための新しいモデルを紹介している。弱さを見せあえる組織により、実例によると次のような成果が得られている。(収益性向上、退職率低下、昇進の加速化、、より率直なコミュニケーションの実現、より効果の高い権限移譲、責任感の強化、コスト削減、社内政治や部門間対立の緩和、社員の意欲減退やさぼりの解消、一見すると解決不可能に見える問題の解決など)
●引用 ・本書では「development」という言葉をかなり違う意味で使っている。社員のキャリアの発展「development」ではなく、社員の人間としての発達「development」に光を当て、組織を大きくすることより、組織をよくすることをまず考える。・以前は環境順応型知性で(言い換えれば「よき兵士」であることで)通用していた働き手たちに自己主導型知性への移行が、自己主導型知性で(「自信に満ちたキャプテン」であることで)通用していたリーダーたちが自己変容型知性への移行が求められている。つまり、すべての人が知性のレベルを次の次元に向上させる必要があるのだ。・一般的な組織は、自覚はないかもしれないが、ある種の混乱を最小限に抑えたいという発想を根っこに持っている。確実性、予測可能性、パターン化された行動、コントロール、結びつきーーーーーこうした要素を揺るがしかねないものをできるだけ少なくしたがるのだ。そうすることで感情を乱す雑音や動揺を経験せずに仕事を完了させようとする。対照的に、この組織つまり発達指向型組織(DDO)は、奇妙に聞こえるかもしれないが、混乱に価値を見いだし、適度は混乱を維持しようとする。過剰な混乱は避けるが、混乱をゼロにしようとはしない。・弱さは財産になりうる。失敗はチャンスだ。・この組織(DDO)は、メンバーが自分の能力の限界を知ることを可能とし、限界と向き合うことに価値を見出せるように促す。・この組織(DDO)は、メンバーの弱点や能力不足を「資源」と位置づけ、メンバーにあえてそれを認識させようとする。・安定を崩すことが建設的な結果につながる場合がある・DDOは「建設的な不安定化」を実践している。・不安定な状況を経験させる目的は、企業文化の趣旨を体感させることにある。・社員の行動の根っこになる原因を洗い出すプロセスに手加減は加えられないが、適切に実行されれば、そこに敵意や攻撃性は介在しない。・痛みを味わう経験を普通で当然のものとみなし、成長のチャンスと位置付けている。・「痛み+内省=進歩」なのである。・DDOの慣行を俯瞰してみると、三社の土台にある共通点をいくつか指摘したい。→人の内面の要素を外に引き出す。(自分の思考と感情、そして行き詰まっている点を他人と自分自身に認識させてはじめて、人は新しい自分を築けるのだ。→業務を自己改善に結びつける。(日々の仕事と自己改善は別々のものでなく、一体をなしているのだ。)→ものごとの結果ではなく、その結果を生むプロセスに目を向けるように促す。(結果の根底にある思考を改善することに関心を払う。)・幸福を「プロセス」(可能性を開花させ、進化し、よりよい自分になる過程)とみなす考え方だ。よき苦闘、すなわち、新しい人生に向けた産みの苦しみを門前払いしたりはしない。それは自分が望む人間になるための案内役かもしれないのだから。
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